名古屋高等裁判所金沢支部 昭和33年(う)41号 判決
原判決挙示の証拠を綜合すれば原判示第三、第五事実のとおり被告人立山酒造株式会社の取締役なる被告人水上弘、同会社の支配人なる被告人水上豊治の両名は共謀の上、法定の除外事由なきに拘わらず同会社の業務に関し営業の目的を以て使用するため原判決第三、一及び二摘示の日時場所において政府以外の中野農業協同組合及び水上太郎から粳玄米四斗入九十俵及び十俵を一俵当り四千二百円の割合で買い受けた事実を肯認することができる。而して原判決は右所為に対し罰条として食糧管理法第二条第九条第一項第三十一条(被告人立山酒造株式会社に対しては更らに同法第三十七条をも適用)同法施行令第七条同法施行規則第四十条を適用処断していることは記録上明らかである。
弁護人は「右粳玄米は同会社の営業たる清酒製造のために買い受けたものでなく、同会社の使用人たる杜氏又は蔵人等数十名の飯米の不足を補うために買い受けたものであるから食糧管理法施行規則第四十条にいわゆる『営業の目的を以て使用するため米穀を買い受け』たものではない」旨主張する。成程記録によれば被告会社が右粳玄米を買い受けたのは所論の如く被告会社がその使用人たる杜氏又は蔵人等数十名の飯米の不足を補うためであつて、清酒の原料とする目的を以て買い受けたものでなかつたことが認められる。併し食糧管理法施行規則第四十条にいわゆる「営業の目的を以て使用するため」の米穀の買受行為とは、使用するための米穀の買受行為が営業者の主たる営業に属する場合のみならず営業遂行の必要上、通常附随的になされる場合における買受行為を総て包含するものと解すべきである。ところが原判決挙示の証拠によれば右認定の杜氏又は蔵人は季節的に移動する酒造職人であり、米穀通帳を持参しない者も相当多く、これらの者に飯米を支給しなければ其の雇入が困難であるため被告人会社においては業務遂行の必要上、その滞在中これらの者に飯米を支給したものであつたことを認め得べく、従つて被告人会社の米穀の買受行為は、被告人会社の営業たる酒造業を遂行するために附随的になされた所為であると解すべきであつて、所論の如き一般の家庭的消費者の買受と同一視することはできないから前記食糧管理法施行規則第四十条にいう「営業の目的を以て」する米穀の買受に該当するものと謂わなければならない。而して被告人会社の右買受が法定の除外事由なくしてなされたものであること前認定のとおりであるから原判決が被告人等の所為に対し右施行規則第四十条を適用処断したことは正当である。
(裁判長裁判官 山田義盛 裁判官 沢田哲夫 裁判官 辻三雄)